ゆでたまご 嶋田隆司
好きであり続けることの
延長線上に〝夢〟がある
photo:King Chang
interview & text:King Chang
edit:Y-Jet & Crazy-J
1960年10月28日生まれ。大阪市西淀川区出身。
緻密に計算されたストーリー展開と、個性溢れるキャラクターで、デビューから30年以上が経つ今なお、ファンを魅了し続けている。キャラクター原案のデザインも行う。
夢を追う中で、ライバルと競い合う関係は必要ですか?
そうですね。僕らの場合は勝手に競争させられてたんですけど。長く続けられれば、本当は5番か6番くらいでいいと思ってました。でも周りの漫画家たちは、何が何でも1位を獲りたいから、とにかく凄かったですよ。『キャプテン翼』とか『北斗の拳』とか…。結果的にそれがいいものを作り出してますから、競い合うことは絶対必要ですよ。今となっては、いい戦友たちがたくさんいて、すごく良かったなと思いますね。
あの当時の漫画家の人って、今でもずっと描き続けてるじゃないですか。車田正美さんにしても、宮下あきらさんにしても、高橋陽一君にしても、原哲夫君にしても…。あの時代の『ジャンプ』の漫画家は皆、すごいんですよ!「何でそんなに頑張るの」って聞きたいです。
サバイバルを共に生き抜いてきた戦友たちが頑張ってるんだから、僕らも負けられないし、辞めてなんかいられないんです。
そんな〝ジャンプ黄金期〟を支えてきた嶋田先生にとって、夢を追う上で一番大切にしてきたことは何ですか?
やっぱりずっと好きであり続けることですよね。好きじゃないと長続きはしないです。好きであり続けることの延長線上に〝夢〟があるんだと思います。
有名になろうとかお金儲けをしようとかってだけのためなら、やっていけないと思います。やっぱり好きじゃないとダメですよね。だから僕は、今でも楽しいですよ。
今後のさらなる夢や目標はありますか?
もっと『キン肉マン』が若い世代を中心に、幅広い層に知ってもらいたいっていうのはありますね。あと海外にも広まってほしいですね。
最初に描いた『キン肉マン』を、50歳を過ぎてた今でもやってるとは、夢にも思わなかったです。10代の頃に思った「読者の人たちに喜んでほしい」って気持ちは、今も変わりませんし、これからもどんどん、世代を超えて広まって欲しいですね。
先生は夢を達成できたと感じたことはありますか?
初めて自分が描いたものが読み切りに載った時は、達成感はありました。でも、あれ以上の達成感はまだないんですよ。今後『キン肉マン』によって、何かが世の中に広まっていってくれれば嬉しいですね。終わりはないです。だから達成感っていうのは、ずっとないんじゃないのかなって思います。
夢を追っている人たちのことを、当サイトでは「夢を創り上げる」という意味を込めて〝クリエイター〟と呼ばせていただいているんですが、その人たちにメッセージをお願いします。
漫画家とか、専門的な仕事を目標にしてる人には、「好きであり続ける」ことと、「自分にしかない武器を持ってほしい」と伝えたいです。例えば、このジャンルでは絶対負けないっていうものを磨いてほしいですね。
今って一人の漫画家が、色んなジャンルの漫画を描く時代ではないじゃないですか。専門的に描いてる人が多いんですよ。昔は一人の漫画家が、色んなジャンルを描けないとダメだって言われたんですけど、今は、各分野に精通している人が多いんで、これなら誰にも負けないっていう武器があれば強いと思いますよ。例えば、格闘家ならタックルやったら誰にも負けないとか、カウンターやったら超一流だとか、そんな自信になるような武器を見つけてもらいたいです。
最後に〝夢〟とはなんでしょうか?
夢ってなんでしょうね…。難しいな~。
自分の存在意義みたいなもんですかね。何でここに生まれてきたのかっていう。アイデンティティーみたいな。それがあるから自分は生きてるっていう実感みたいなもんですか。尽きないんですよ、夢は。だから到達点ではないですよね。
よく考えたら、ここ3、4年で老眼もすごく進んでて確実におっさんなんですけど、気持ちは10代のまんまですね。まだ何も達成してないっていうか、これからっていうか…。キン肉マニアとか色んなイベントを終えた時には、ものすごい達成感はあるんですけど、でもなんか違うなって…。とにかく夢には終わりはないです。
何が夢って上手く言えないですけど、まだ達成していないからこそ、毎日が面白いんですよ。何が起こるか分からないですから。ヤケドなんかもね…(苦笑)。新しいカバーに描き換えて、コミックスが再販になったりとか、そういうの嬉しいですね。
ずっと夢が尽きないからこそ、毎日が面白いんですよ。そんな楽しい毎日の中で、自分が好きなものを好きであり続ければこそ、その先に〝夢〟という通過点が見えてくるのじゃないですかね。
いつまでも漫画家という夢を追い続けているからこそ、日々楽しいんですね。大変貴重なお話、長時間に渡りありがとうございました。